日本人に必要な異文化理解力。文化のズレを理解することでコミュニケーション方法が変わる。

グローバル化が進む職場環境における異国・異文化間でのミスコミュニケーションの原因をどう理解し、解消していくのか。世界中のビジネスパーソンから指南書として熱狂的に支持されている 『異文化理解力』の著者エリン・メイヤー氏。 HDEは彼女に直接、インタビューする機会を得ました。

多国籍な才能あるメンバーが集い、グローバルな職場環境下でパフォーマンスを発揮する社員たちが実際に感じているビジネスコミュニケーション上の疑問や迷いを、HDEのマネジメントを務める宮本と人事部門を担当する細山田が、異文化コミュニケーションのプロフェッショナルに直接質問。ここでしか聞けない、生の"異文化理解ソリューション"をライブでお届けします。

本日はお忙しい中ありがとうございます。 『異文化理解力』を拝読致しまして沢山伺いたいことがあるのですが、まずは私たちの会社について説明させてください。
ありがとうございます。目の前の資料を少し見ただけで非常に面白い会社であることがわかります。若いIT系企業の典型的な特徴がカルチャーマップに表れていますね。
弊社は1996年に創業し、2014年まではほぼ日本人のみで占められていました。 2014年から外国籍のスタッフの採用を開始し、現在は23名の外国籍スタッフが勤務しています。
日本人が一番多く177名、次がインドネシアで、タイ、マレーシア、中国、ミャンマー、アメリカ、コロンビア、スイス、韓国と10ヶ国のスタッフがいます。
彼らは海外で採用して呼び寄せたのですか? それとも日本で採用したのですか?
海外で採用されたスタッフもいれば、すでに留学生として日本在住だった方を採用したパターンもあります。
『異文化理解力』に従って、それぞれの指標にHDEのコーポレートカルチャーを分析してみましたので個別にご紹介させてください。
楽しみです。私の言葉で"Who are you ?"と表現しますが、自己分析に似たプロセスですよね。



まずコミュニケーションの指標については、社員に日本人をはじめ、アジア諸国のスタッフが多いからだと思いますが、ハイコンテクストに寄っています。 評価の指標では、この辺ですね。 説得の指標は、原理主義と応用・実務主義の中間あたり、リーダーシップについては日系企業でありながら、かなり平等主義寄りの評価となっています。

まさにこの業界の特徴が表れていますね。 IT系の企業は平等主義の分布を示すことが多いです。
なるほど。
この業界においてはそれが理想的なリーダーシップのあり方なのかもしれませんね。御社においても創設者の方々がそういったフラットで平等主義な環境を作りたいのではないですか。
まさにその通りです。オープンソースを扱う文化ですから、平等主義の労働環境が心地よく最適だと思います。

① HDEの社風に近い国はスウェーデン?

エリン・メイヤー氏(INSEAD 教授)

異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とする。異文化交渉、多文化リーダーシップについて世界中で教鞭をとり、グローバル・バーチャル・チームのマネジメントや、エグゼクティブ向けの異文化マネジメントなどのプログラム・ディレクターを務めている。「ハーバード・ビジネス・レビュー」「ニューヨーク・タイムズ」など一流媒体への寄稿多数。また世界銀行、国連、エクソンモービル、ミシュランなど世界的な組織や企業で講演やセミナーを行っている。2015年には次代を担う世界の経営思想家として「Thinkers50 Radar Award」を受賞。著書に「異文化理解力~相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養」(原題:The Culture Map)がある。

さて、今回4つ質問を用意してきましたので順番に伺っていきたいと思います。 まず、私たちのような日本的なスタイルだけれどもリーダーシップにおいては平等主義的な組織、企業は世界の他の地域にみられますか?
そうですね、企業ではないですが、最も近いのではないかと最初に頭に浮かんだ国はスウェーデンです。
スウェーデンですか!

スウェーデンと日本を比較した時に、決断、直線的なスケジューリングという指標において二国は非常に近い位置にありますね。どちらも合意主義的です。
見解の相違の伝え方についても、他の西洋諸国と比較するとスウェーデンは最もアジア寄りのアプローチをとるといえるでしょう。

また沈黙についての感覚というのも、日本人が沈黙を不快と思わないのと同様に、スウェーデン人も似たような感覚を持っています。

ただスウェーデンはネガティブなフィードバックについてはより率直にダイレクトに伝える傾向があります。カルチャーマップでも日本と離れた位置にありますね。


なるほど、そこは違いますね。
このように述べた上で、日本というのは非常に独特な文化をもっていることを強調したいと思います。正直日本と同じ分布図を示す国は他に見られないのです。つまり日本的なスタイルを基本としながら、平等主義という特異性を示すのは御社だけではないですか?(笑)
次の質問に移る前に、もし何か社内で苦戦していることや課題と思われる部分があれば教えていただけませんか?
そうですね、例えばリーダーシップについてですが、マネージャーによって管理スタイルが違うことによって、多文化の現場では誤解が生じやすいことでしょうか。 グローバルなチーム構成をまとめて統一感をもち、平等主義の方向に移行してはおりますが。
わかります。難しいと思います。
なぜなら社員構成はアジア諸国が中心です。彼らは階層主義の下で働くことに慣れている文化です。
はい。さらにハイコンテクストの文化もまた状況を難しくしていると思います。
ハイコンテクストの文化同士というのは、誤解し合うことが多々あります。
問題がもし隠れていたとしても、目立ちにくいこともあります。
ハイコンテクストの文化をもつ人同士、暗黙の了解や空気を読むということをするなかで、異なる文化同士の場合は間違ったメッセージを受け取ってしまうということがよくあります。

② カルチャーマップからわかるHDEの未来とは?

私たちは今後もグローバルな採用活動を続けていきたいと考えていますが、HDEの将来像についてどのように予測されますか?
予測ですか?大成功して裕福になっているでしょう!(笑)
ありがとうございます(笑)
今後どのようなことが起こり得るか、また備えるべきことや注意点があれば伺いたいと思います。
そうですね、今後もアジア諸国を中心に採用しますか?それとも西洋諸国からも採用を増やしていきますか?
アジア諸国に限らず、他の国へも採用を広げていきたいという考えはありますが、 おそらくアジア諸国の方が自然と集まる機会が多いのではないかと思います。

予測ですよね。国際的な展開を継続し、さらに進めていく場合、おそらく最もリスクとなり得るのは日本的なカルチャーが強い部分。

見てください、カルチャーマップの中で、コミュニケーション、評価、信頼の指標において御社はかなり日本的な要素が強いですね。


たしかに。

これまでのように、アジア諸国を中心にスタッフを採用するぶんにはこの状況は心地良いものだと言えます。 しかし、今後西洋諸国の採用を増やすのであれば、これらの地域の人にとって日本の文化はあまりにも直接口に出さないコミュニケーションが多すぎるのです。

ありがちな例としては、あなた方が積極的にコミュニケーションを図っていると思っていることが、対極に位置する文化の人間から見ると、秘密主義的だったり、何か隠しているのではないかと疑念を抱かせてしまうことがあります。

それは彼らが空気を読み、口に出されないメッセージを受け取ることが出来ないからです。そのような場合、信頼性に影響を与えることがあり得るでしょう。 意図的に情報を共有しないのではないかと取られることもよくあります。

そんなつもりはないのに、そうなってしまうこと、ありそうですね。

評価の指標を見てください。これも欧米諸国の人にとっては難しい部分です。

日本ではネガティブなフィードバックについてはっきり伝える文化がありませんね。
フィードバックがあったとしても、かなりオブラートに包んだ言い方をするでしょう。
欧米諸国のほとんど、インドもそうですが、対極に位置する文化の人々にとっては全く意味不明ということになります。
仕事における評価を理解できないという問題が生じます。

そして、次の項目です。私はこれが一番大切だと思うのが、信頼の指標です。
国際的な成長を続ける際に重要なキーとなる指標だからです。

日本人はよく終業後に食事や飲みに行くなど会社外でも一緒に時間を過ごしますね。
そうすると日本人同士は強固な信頼関係を築きやすいのですが、一方で他の文化の人間はその輪の中に入れずに同程度の信頼関係を築けないことがあります。
疎外感を味わうこともあるでしょう。

ですから、まず一つお勧めするのは御社のブレイクダウンしたカルチャーマップを描いてみてください。HDEのカルチャーマップを書き出してください。そして理想の方向性、企業文化の目指す姿としての位置もカルチャーマップ上に示してください。

ぜひやってみたいですね。

次に大事なことですが、人事部はこれを積極的に活用することを習慣にしてください。
例えば新入社員が加わった際には、このカルチャーマップを使用して御社の企業文化について話す機会を積極的に作ります。

HDEの文化とはどういうものなのか、このカルチャーマップは何を意味するのかを。
これは非常に大切なことです。

そして、先ほどの指標の中でも指摘しましたが、コミュニケーション、評価、信頼の指標は会社としてもう少し取り組みを強化し将来的に変える必要がある部分でしょう。
特に今よりも広い範囲の文化圏から採用が増えた場合に、課題となってくるからです。

そうですね。

例えば、タイ人のスタッフとインドネシア人のスタッフは共にハイコンテクストの文化ですね。
ただ、お互い受け取るメッセージは同じとは限りませんから誤解が生じることはあるでしょう。
しかしながら、二国とも間接的な表現で不快感を示すため、はたから見るとこのスタッフ同士が不満を抱えているとは分からないかもしれません。

しかし、国際化がより進んでいくと、このうまく収まっていた状況が一気に崩れてしまうということも起こり得るのです。

具体的にはどういったアクションが有効でしょうか。
リーダーとして、明快な表現をすべき状況について考えてみてはいかがでしょうか?
ハイコンテクストの文化のなかで、隠れたメッセージというのは意識的に隠しているわけではないので、まずはそれを意識する必要があります。感覚で分かり合えてしまうことを明確に意識し確認するということですね。

③ 日本らしい「ハイコンテクスト文化」はビジネスにどのような影響を与えるのか

宮本 和明(株式会社HDE 代表取締役 副社長)

1973年愛媛県生まれ。東京大学理科一類から文系に転向、文学部言語文化学科(国文学)卒業。 創業メンバーの一人としてHDE初期プロダクトのUI設計に従事し、97年11月の株式会社への組織変更をきっかけに代表取締役副社長に就任。 その後数年おきに直接部門と間接部門の行ったり来たりを繰り返し、現在はクラウドサービスの運用部門と人事部門を並行して担当。 部下を怒るのが大の苦手で、生まれてこの方一度も部下を怒ったことがない。最近なぜか「実はあの人は怖いらしい」という噂が流れていることを察知したが、都合がいいので噂はそのまま放置中。ここ数年で海外から来たメンバーも部下に入り、マネジメントは個人的にも会社的にも新しい局面に差し掛かっている。

私自身にとってはハイコンテクストなコミュニケーションは自然で快適なものです。
例えば、新しいスタッフに10を説明せずとも2-3説明をした段階で大体のことが伝わるという、分かり合える心地よさがあります。
ですから日本人同士の間では心地良さに甘えてしまいがちです。
言うならば、毒入りのお菓子というか、甘い誘惑です。
うまい例えですね(笑)
しかし、私自身はローコンテクストな方向に変化する覚悟を決めたいと考えています。
具体的にはどういう場面でこのように考えますか?
仕事の指示を出す場面でしょうか?
そうですね。

どの地域の方と仕事をするかにもよりますが、まずリーダーシップの指標をみてみましょう。

例えばインドネシアやタイのスタッフが加わったとしましょう。
彼らはかなり階層主義寄りに位置しています。
ですから上司から細かく指示を出されることに違和感がありません。
また空気を読むことも好みます。

平等主義のカルチャーでは、いちいち細かい指示を出されることを好みません。
自分自身で考え取り組みたいという主義です。ですから私がすすめるのは、上に立つものとしてあなたがするべきは方向性をはっきりと示すこと、状況をクリアに説明した上で方向性を明確にして理解させること。

この人に電話をして、メールを送って、このようなレポートを仕上げてという具体的な指示を出すのではなく、取引先についての情報を十分に与え、現在の状況やそこに至った背景、目的、包括的な戦略、何を達成したいのかというものを明確に示すのです。

なるほど。とても理想的ですが、とても高レベルなコミュニケーション能力が求められますね。
これは時間を要することです。ミーティングの最後には、時間をとり決定事項やアクションの責任の所在をはっきりさせるのが大切です。時間もエネルギーも必要ですが、とても重要な部分です。

日本のミーティングの様子を見ていて思うのが、最後に特に確認し合わなくとも、誰が何をするかというのを全員が理解しているという不思議な状況があるということです。ただこれが異文化で構成されるチームの場合は、確認作業をシステム化することが大切です。日本人はシステムを作るのが大変上手ですから、このシステムは甘い毒入りのお菓子ではなく、酸っぱい未熟の梨のようなものですね。

日本人に必要な異文化理解力。文化のズレを理解することでコミュニケーション方法が変わる。

グローバル化が進む職場環境における異国・異文化間でのミスコミュニケーションの原因をどう理解し、解消していくのか。世界中のビジネスパーソンから指南書として熱狂的に支持されている 『異文化理解力』の著者エリン・メイヤー氏。 HDEは彼女に直接、インタビューする機会を得ました。

多国籍な才能あるメンバーが集い、グローバルな職場環境下でパフォーマンスを発揮する社員たちが実際に感じているビジネスコミュニケーション上の疑問や迷いを、HDEのマネジメントを務める宮本と人事部門を担当する細山田が、異文化コミュニケーションのプロフェッショナルに直接質問。ここでしか聞けない、生の"異文化理解ソリューション"をライブでお届けします。

本日はお忙しい中ありがとうございます。 『異文化理解力』を拝読致しまして沢山伺いたいことがあるのですが、まずは私たちの会社について説明させてください。
ありがとうございます。目の前の資料を少し見ただけで非常に面白い会社であることがわかります。若いIT系企業の典型的な特徴がカルチャーマップに表れていますね。
弊社は1996年に創業し、2014年まではほぼ日本人のみで占められていました。 2014年から外国籍のスタッフの採用を開始し、現在は23名の外国籍スタッフが勤務しています。
日本人が一番多く177名、次がインドネシアで、タイ、マレーシア、中国、ミャンマー、アメリカ、コロンビア、スイス、韓国と10ヶ国のスタッフがいます。
彼らは海外で採用して呼び寄せたのですか? それとも日本で採用したのですか?
海外で採用されたスタッフもいれば、すでに留学生として日本在住だった方を採用したパターンもあります。
『異文化理解力』に従って、それぞれの指標にHDEのコーポレートカルチャーを分析してみましたので個別にご紹介させてください。
楽しみです。私の言葉で"Who are you ?"と表現しますが、自己分析に似たプロセスですよね。



まずコミュニケーションの指標については、社員に日本人をはじめ、アジア諸国のスタッフが多いからだと思いますが、ハイコンテクストに寄っています。 評価の指標では、この辺ですね。 説得の指標は、原理主義と応用・実務主義の中間あたり、リーダーシップについては日系企業でありながら、かなり平等主義寄りの評価となっています。

まさにこの業界の特徴が表れていますね。 IT系の企業は平等主義の分布を示すことが多いです。
なるほど。
この業界においてはそれが理想的なリーダーシップのあり方なのかもしれませんね。御社においても創設者の方々がそういったフラットで平等主義な環境を作りたいのではないですか。
まさにその通りです。オープンソースを扱う文化ですから、平等主義の労働環境が心地よく最適だと思います。

① HDEの社風に近い国はスウェーデン?

エリン・メイヤー氏(INSEAD 教授)

異文化マネジメントに焦点を当てた組織行動学を専門とする。異文化交渉、多文化リーダーシップについて世界中で教鞭をとり、グローバル・バーチャル・チームのマネジメントや、エグゼクティブ向けの異文化マネジメントなどのプログラム・ディレクターを務めている。「ハーバード・ビジネス・レビュー」「ニューヨーク・タイムズ」など一流媒体への寄稿多数。また世界銀行、国連、エクソンモービル、ミシュランなど世界的な組織や企業で講演やセミナーを行っている。2015年には次代を担う世界の経営思想家として「Thinkers50 Radar Award」を受賞。著書に「異文化理解力~相手と自分の真意がわかる ビジネスパーソン必須の教養」(原題:The Culture Map)がある。

さて、今回4つ質問を用意してきましたので順番に伺っていきたいと思います。 まず、私たちのような日本的なスタイルだけれどもリーダーシップにおいては平等主義的な組織、企業は世界の他の地域にみられますか?
そうですね、企業ではないですが、最も近いのではないかと最初に頭に浮かんだ国はスウェーデンです。
スウェーデンですか!

スウェーデンと日本を比較した時に、決断、直線的なスケジューリングという指標において二国は非常に近い位置にありますね。どちらも合意主義的です。
見解の相違の伝え方についても、他の西洋諸国と比較するとスウェーデンは最もアジア寄りのアプローチをとるといえるでしょう。

また沈黙についての感覚というのも、日本人が沈黙を不快と思わないのと同様に、スウェーデン人も似たような感覚を持っています。

ただスウェーデンはネガティブなフィードバックについてはより率直にダイレクトに伝える傾向があります。カルチャーマップでも日本と離れた位置にありますね。


なるほど、そこは違いますね。
このように述べた上で、日本というのは非常に独特な文化をもっていることを強調したいと思います。正直日本と同じ分布図を示す国は他に見られないのです。つまり日本的なスタイルを基本としながら、平等主義という特異性を示すのは御社だけではないですか?(笑)
次の質問に移る前に、もし何か社内で苦戦していることや課題と思われる部分があれば教えていただけませんか?
そうですね、例えばリーダーシップについてですが、マネージャーによって管理スタイルが違うことによって、多文化の現場では誤解が生じやすいことでしょうか。 グローバルなチーム構成をまとめて統一感をもち、平等主義の方向に移行してはおりますが。
わかります。難しいと思います。
なぜなら社員構成はアジア諸国が中心です。彼らは階層主義の下で働くことに慣れている文化です。
はい。さらにハイコンテクストの文化もまた状況を難しくしていると思います。
ハイコンテクストの文化同士というのは、誤解し合うことが多々あります。
問題がもし隠れていたとしても、目立ちにくいこともあります。
ハイコンテクストの文化をもつ人同士、暗黙の了解や空気を読むということをするなかで、異なる文化同士の場合は間違ったメッセージを受け取ってしまうということがよくあります。

② カルチャーマップからわかるHDEの未来とは?

私たちは今後もグローバルな採用活動を続けていきたいと考えていますが、HDEの将来像についてどのように予測されますか?
予測ですか?大成功して裕福になっているでしょう!(笑)
ありがとうございます(笑)
今後どのようなことが起こり得るか、また備えるべきことや注意点があれば伺いたいと思います。
そうですね、今後もアジア諸国を中心に採用しますか?それとも西洋諸国からも採用を増やしていきますか?
アジア諸国に限らず、他の国へも採用を広げていきたいという考えはありますが、 おそらくアジア諸国の方が自然と集まる機会が多いのではないかと思います。

予測ですよね。国際的な展開を継続し、さらに進めていく場合、おそらく最もリスクとなり得るのは日本的なカルチャーが強い部分。

見てください、カルチャーマップの中で、コミュニケーション、評価、信頼の指標において御社はかなり日本的な要素が強いですね。


たしかに。

これまでのように、アジア諸国を中心にスタッフを採用するぶんにはこの状況は心地良いものだと言えます。 しかし、今後西洋諸国の採用を増やすのであれば、これらの地域の人にとって日本の文化はあまりにも直接口に出さないコミュニケーションが多すぎるのです。

ありがちな例としては、あなた方が積極的にコミュニケーションを図っていると思っていることが、対極に位置する文化の人間から見ると、秘密主義的だったり、何か隠しているのではないかと疑念を抱かせてしまうことがあります。

それは彼らが空気を読み、口に出されないメッセージを受け取ることが出来ないからです。そのような場合、信頼性に影響を与えることがあり得るでしょう。 意図的に情報を共有しないのではないかと取られることもよくあります。

そんなつもりはないのに、そうなってしまうこと、ありそうですね。

評価の指標を見てください。これも欧米諸国の人にとっては難しい部分です。

日本ではネガティブなフィードバックについてはっきり伝える文化がありませんね。
フィードバックがあったとしても、かなりオブラートに包んだ言い方をするでしょう。
欧米諸国のほとんど、インドもそうですが、対極に位置する文化の人々にとっては全く意味不明ということになります。
仕事における評価を理解できないという問題が生じます。

そして、次の項目です。私はこれが一番大切だと思うのが、信頼の指標です。
国際的な成長を続ける際に重要なキーとなる指標だからです。

日本人はよく終業後に食事や飲みに行くなど会社外でも一緒に時間を過ごしますね。
そうすると日本人同士は強固な信頼関係を築きやすいのですが、一方で他の文化の人間はその輪の中に入れずに同程度の信頼関係を築けないことがあります。
疎外感を味わうこともあるでしょう。

ですから、まず一つお勧めするのは御社のブレイクダウンしたカルチャーマップを描いてみてください。HDEのカルチャーマップを書き出してください。そして理想の方向性、企業文化の目指す姿としての位置もカルチャーマップ上に示してください。

ぜひやってみたいですね。

次に大事なことですが、人事部はこれを積極的に活用することを習慣にしてください。
例えば新入社員が加わった際には、このカルチャーマップを使用して御社の企業文化について話す機会を積極的に作ります。

HDEの文化とはどういうものなのか、このカルチャーマップは何を意味するのかを。
これは非常に大切なことです。

そして、先ほどの指標の中でも指摘しましたが、コミュニケーション、評価、信頼の指標は会社としてもう少し取り組みを強化し将来的に変える必要がある部分でしょう。
特に今よりも広い範囲の文化圏から採用が増えた場合に、課題となってくるからです。

そうですね。

例えば、タイ人のスタッフとインドネシア人のスタッフは共にハイコンテクストの文化ですね。
ただ、お互い受け取るメッセージは同じとは限りませんから誤解が生じることはあるでしょう。
しかしながら、二国とも間接的な表現で不快感を示すため、はたから見るとこのスタッフ同士が不満を抱えているとは分からないかもしれません。

しかし、国際化がより進んでいくと、このうまく収まっていた状況が一気に崩れてしまうということも起こり得るのです。

具体的にはどういったアクションが有効でしょうか。
リーダーとして、明快な表現をすべき状況について考えてみてはいかがでしょうか?
ハイコンテクストの文化のなかで、隠れたメッセージというのは意識的に隠しているわけではないので、まずはそれを意識する必要があります。感覚で分かり合えてしまうことを明確に意識し確認するということですね。

③ 日本らしい「ハイコンテクスト文化」はビジネスにどのような影響を与えるのか

宮本 和明(株式会社HDE 代表取締役 副社長)

1973年愛媛県生まれ。東京大学理科一類から文系に転向、文学部言語文化学科(国文学)卒業。 創業メンバーの一人としてHDE初期プロダクトのUI設計に従事し、97年11月の株式会社への組織変更をきっかけに代表取締役副社長に就任。 その後数年おきに直接部門と間接部門の行ったり来たりを繰り返し、現在はクラウドサービスの運用部門と人事部門を並行して担当。 部下を怒るのが大の苦手で、生まれてこの方一度も部下を怒ったことがない。最近なぜか「実はあの人は怖いらしい」という噂が流れていることを察知したが、都合がいいので噂はそのまま放置中。ここ数年で海外から来たメンバーも部下に入り、マネジメントは個人的にも会社的にも新しい局面に差し掛かっている。

私自身にとってはハイコンテクストなコミュニケーションは自然で快適なものです。
例えば、新しいスタッフに10を説明せずとも2-3説明をした段階で大体のことが伝わるという、分かり合える心地よさがあります。
ですから日本人同士の間では心地良さに甘えてしまいがちです。
言うならば、毒入りのお菓子というか、甘い誘惑です。
うまい例えですね(笑)
しかし、私自身はローコンテクストな方向に変化する覚悟を決めたいと考えています。
具体的にはどういう場面でこのように考えますか?
仕事の指示を出す場面でしょうか?
そうですね。

どの地域の方と仕事をするかにもよりますが、まずリーダーシップの指標をみてみましょう。

例えばインドネシアやタイのスタッフが加わったとしましょう。
彼らはかなり階層主義寄りに位置しています。
ですから上司から細かく指示を出されることに違和感がありません。
また空気を読むことも好みます。

平等主義のカルチャーでは、いちいち細かい指示を出されることを好みません。
自分自身で考え取り組みたいという主義です。ですから私がすすめるのは、上に立つものとしてあなたがするべきは方向性をはっきりと示すこと、状況をクリアに説明した上で方向性を明確にして理解させること。

この人に電話をして、メールを送って、このようなレポートを仕上げてという具体的な指示を出すのではなく、取引先についての情報を十分に与え、現在の状況やそこに至った背景、目的、包括的な戦略、何を達成したいのかというものを明確に示すのです。

なるほど。とても理想的ですが、とても高レベルなコミュニケーション能力が求められますね。
これは時間を要することです。ミーティングの最後には、時間をとり決定事項やアクションの責任の所在をはっきりさせるのが大切です。時間もエネルギーも必要ですが、とても重要な部分です。

日本のミーティングの様子を見ていて思うのが、最後に特に確認し合わなくとも、誰が何をするかというのを全員が理解しているという不思議な状況があるということです。ただこれが異文化で構成されるチームの場合は、確認作業をシステム化することが大切です。日本人はシステムを作るのが大変上手ですから、このシステムは甘い毒入りのお菓子ではなく、酸っぱい未熟の梨のようなものですね。